高配当株とは
高配当株は、他の企業に比べて相対的に高い配当金を提供する企業の株式のことです。一株当たりの年間配当金を、現在の株価で割ったものを「配当利回り」と呼びますが、一般に高配当株というと、配当利回りが4%以上が目安となります。
日本を代表する企業を擁する東証プライム上場企業の平均配当利回りは約2%なので、高配当株はそれら企業グループの2倍以上の配当金を払う力を持つ企業になります。10万円の高配当株を保有していると、年間で4,000円以上の配当金を得ることになります。超低金利が続く日本で銀行に預けた場合の金利は殆どゼロなので、その差は歴然です。
高配当株の特徴
配当金とは、企業が利益を出した際に、その一部を株主に分配するものです。典型的な高配当株は、将来に向け積極的に投資を行っている企業よりは、市場で一定の地位を築き、収益が安定し、大規模な成長投資を必要とせず、株主に高い配当金を出す余裕のある成熟した企業が多く、投資先として名の知れた安心感のある銘柄が多くあります。一方で、将来に向けた投資をしてもこれ以上の大きな成長が見込めないことから、手元の利益を株主に還元することを優先しているケースもあり、この場合、その企業は衰退を始めている可能性があることから、見極めが必要です。
高配当株が多い業界はどこでしょうか。以下に代表例を挙げてみました。
- 銀行
- 銀行は、規制に守られた安定した収益モデルを持ち、また成熟産業であることから、高い配当金を出す企業が比較的多いと言えます。ただし業績が景気や金利の動向に大きく左右されやすく、低金環境で株価が下落しているところで配当利回りが高く見えているケースもあるため、注意が必要です。
- エネルギー
- 生活や産業に欠かすことができないエネルギー、例えば石油やガスの供給に関わる企業は、長期的な投資や契約に支えられた持続的なキャッシュフローを持ちます。また資本集約型産業で産業障壁が高いことから、企業の集約が進んでおり、激しい競争を生き残った企業は、高い収益力で株主に還元する力を持ちます。
- 総合商社
- 様々な事業を手がける総合商社は、日本独自の業態と言われます。近年好業績を背景にした積極的な株主還元策を打ち出しています。また事業の全体像が見えづらいがゆえにコングロマリット・ディスカウントと呼ばれる割安な株価評価を受けがちであることから、配当利回りが高くなりやすいと言えます。
上記は高配当株として代表的な業界として挙げましたが、あくまで一般論になります。というのは、高い配当金を出しつつも株価上昇を実現する素晴らしい企業は業界に関わらず存在しますし、経営者の資質や考えにも大きく依存するためです。配当利回りのランキングを検索すると、様々な業界の企業があることが分かると思います。
2020年初頭からの新型コロナウイルス拡大によるサプライチェーンの混乱で、空前の好業績を叩き出した海運業界は、業界トップ企業が20%に迫る配当利回りを実現したもの、その水準が今後も持続すると考える人はいません。業界に縛られず、企業の実力や事業環境を見極めることが必要です。
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高配当株ETF
投資先の高配当株を探す時、単純な配当利回りに着目すれば、多くのサイトがランキングが特集記事を出しており、簡単に見つけることができます。ただしよく確認が必要なのは、その高配当が一時的なものか、自分がその株を買った時に同じ額の配当を受け取ることができるか、高配当目当てに買ったら株から急落しトータルで損をしないか、といったことです。これらを分析を始めると、ある程度の専門知識や時間が必要で、皆が皆、普段の生活で忙しい中で、できることではありません。
そんな時は高配当株ETFが助けになるかもしれません。ETFはExchange Traded Fundsの頭文字を取ったもので、証券取引所に上場している投資信託です。投資信託とは株式を含む様々な資産に分散投資した商品で、一つの投資信託を買うだけで、専門家が選んだ複数の株に分散投資ができることになります。これが証券取引所で上場していることで、個別銘柄の株を売買するのと同じように取引できます。
ETFの中には高配当株を謳っているものがあり、投資のプロである証券会社が高配当株を選別しまとめています。そのため、高配当ETFを買うだけで、皆さま自身で個別銘柄を調べる必要がありません。
また手軽に高配当投資ができることもメリットです。例えば手元に10万円あったとします。自分で考えた高配当株に投資しようとすると、1社の最低取引単位である100株分しか買えないかもしれません。ETFは1口から取引できるものも多く、10万円でETFを数口買えば、それだけで数十社の個別銘柄に分散投資をしていることになります。1社の個別銘柄を買った場合に、期待したパフォーマンスが出なくても、多数の銘柄に分散して張っているETFであれば、ある株があるタイミングで配当を減らしても、他の株がそれを補うことで、リスクを限定しつつ、安定的なリターンをを期待することができます。
ETFの利益配当は分配金と呼ばれ、決算期間に発生した配当等から信託報酬等の費用を控除した金額になります。信託報酬は証券会社がETFの運用や管理を行うための手数料で、自分で個別銘柄を選んで買う場合には発生しません。ただしETFの信託報酬は非常に安価なことが多く、一般に人気のある高配当ETFの信託報酬は1%未満、商品によっては0.1%程度のものもあり、受け取る分配金と比較し微々たるものだと思います。
高配当株はやめておけ?
様々な魅力的のある高配当株ですが、やめておけという声も少なくありません。インターネット上で、高配当株をお勧めしないという記事を見ると不安に思う方も沢山いらっしゃると思います。
高配当株に対する反対意見を作っているものは、株式投資に対する姿勢の違いがあります。高配当を出す企業の株価は変動が比較的小さいため、株価の値上がり後に高値で売却するスタイルとは相容れません。過去に自分が買った株が何倍にもなって売れた経験をしてしまうと、高配当株の微妙な値動きや時には購入時の株価を下回る動きをすること、また高配当とはいっても4%程度の利回り、それさえ減配のリスクがあり、いつまでも資産形成ができない!と、我慢ならない人もいるでしょう。
つまり、ハイリスク・ハイリターンか、ローリスク・ローリターンのどちらを目指すか、という考え方の違いで、どちらが正しいということはありません。またどちらかのみに拘るものではありません。例えば固いリターンを狙う高配当株投資を基本にしつつ、生活に支障が出ない範囲で成長企業、未来のAppleやAmazonに張ることも効果的な戦略です。変化の激しい時代ですので、今日の優良高配当株が明日もそうであるとは限らず、逆に新しい企業が成長するチャンス、そしてインターネットを活用した効率的な情報収集で、そういった企業を見つける楽しみもあります。ご自身の生活スタイルや志向に沿って、自分に合ったやり方を見つけることが大事です。